【猛吹雪】イエローナイフでオーロラに涙したら、見知らぬ土地で家族ばらばらになった話(後編)

カナダ
スポンサーリンク

20歳大学生、一人でたどり着いたバンクーバー

三が日の夜、都会の街

 その日は年が明けた三が日。新年あけましておめでとうございますというムードは国が変わっても町中から伝わってくる。今朝まで大雪だった天候はすっかり晴れてその日の光で少しばかり雪は解けているようだ。僕は振替の飛行機に乗るべく家族を見送り空港に残った。その日のフライトはまずカルガリーに行き、そこからバンクーバーに向かう。そのままバンクーバーで一泊するという予定だった。

 バンクーバーに着くころにはすっかり日も暮れていた。空港内のホテルを予約していたためそのまま荷物を部屋に置き、三が日でお店は少ないが市街地まで出かけることにした。空港から中心街までは電車で30分ほどの道のりだった。時間的にもちょっとお散歩をしてご飯を食べたらこの街ともさようならだ。もともとバンクーバーのイメージは僕が小学生の頃にオリンピックがあったことくらいだ。その割に日本からの語学留学性が多いとも聞く。いずれにせよそれくらいの知識の街で何を食べたらよいのだろうか。

 電車に揺られてウォーターフロント駅までやってきた。横浜や神戸とも雰囲気が違う落ち着いた夜の港町といったところだ。世界中どこへ行っても潮風の香りは変わらないせいだろうか。まるで子供のころにバンクーバーに来たことがあるかのような懐かしさも感じる。建造物は石造りのものが並び、そのはるか奥では開発されたビルが僕を拒んでいるのか受け入れているのか、こちらを見下ろしている。

 この街の観光だが見つけたブログによると、200mほど大通りを歩いた先に蒸気時計があり、まずはそこを目指すのが良いらしい。そしてそこから奥はまるでデンジャラスゾーンになってくるので足を踏み入れないのが得策だとも書いてあった。何しろカナダは大麻を合法としている国なので、観光客が巻き込まれるケースもあるのだとか。

 ウォーターフロント駅を出たらすぐにバーっぽいお店があった。おしゃれな内装をしていたが、せっかくの1飯をバーで過ごすわけにはいかなかったので先を急いだ。

 例の蒸気時計まではすぐだった。気温は寒すぎず、冬空の下とても気持ちの良い散歩ができた。さらに三が日だということもあり人はほぼいなく、騒がしいお店なんかも一つもやっていない。だめじゃん。

 結局引き返し、先ほど見つけたバーに入った。

初めての海外ソロディナー

 店内は静かで僕のほかに一組ほどしかいない。理想の海外のバーのようなその内装に似合う男の店員さんが2人出迎えてくれた。とりあえずドリンクはビールを選び、お腹を満たせる食事を選びたい。

何が書いてあるのか全く分からない。

単語一つ一つもそうだが、どこかTOEICのリスニングで出てきそうなそのメニューは散々だった半年前を思い起こさせてどこか嫌だ。何かせめて読めるメニューが良い。欲を言えば港町で海鮮が食べたい。というか大学生にとってはめちゃくちゃ高い!

“KARAMARI”

その文字が目に入ってくるまでそう時間はかからなかった。何かが絡まっているのか。もしくは空回りしそうなのか。日本語が一切通じない異国の地でジャパニーズイントネーションが根強く暮らしていた。先輩、なんと頼もしい。しかも値段もそこまで高くない。先ほど運ばれてきたビールはとてもおいしかったため、このお店は何を注文しても最高の逸品が出てくると自分に言い聞かせながらカラマリをオーダーした。

 ご存じの方も多いかもしれないが、カラマリとは実はイカリングフライのことだ。もう少し名前のニュアンスにイカっぽさとリングっぽさを出してもらいたかった。絡まっている感しか出ていない。そう思い、先ほどこの文章を書きながら調べてみた。

イカフライ、イカリングの別称。

イタリア語のイカの複数形(Calamari)。単数形はカラマーロ(Calamaro)。

https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%9E%E3%83%AA

 イタリア語から来てるんじゃん!100%こっち側の落ち度じゃん!

 祖国のイントネーションに飛びついた食べ盛り男子大学生の前には大人一人分のイカフライが出された。さらにいかに混ざってパプリカなどいくつかの野菜もフライにしてある。大切な旅先でのごはん。これを食べたらもうこの街から帰らないといけない状態でのイカフライ。あまりにさみしい。目のまえのイカを頬張る。

おいしい。少し甘味のあるソースとレモンの酸味にとてもあってる。さらにその隣にはおいしいビール。最高だ。しかし食べ盛り男子大学生には少量だ。

 カウンターに目をやると二人のバーテンダーがそれぞれショットグラスを持ち乾杯をしている。その頃の僕は罰ゲームでショットを仰ぐ日本人しか見てきていなかったので、その姿がなんと様になっていることか。理想の画だし、とても楽しそうに働くお兄さん方である。日本にもこんな映画みたいな職場ないかな。この人たちはこの人たちで大変なのかな。

 カラマリを食べ終えた後はひとしきりゆっくりし、ちょっとお酒を飲みに来ただけですという面をしながらお会計を済ませた。でもお酒、料理、雰囲気、最高でした。ただ少しこちら側の語学力が。

 次の日のフライトも朝早い。というか、その日もだいぶ早起きだったのでホテルに帰り早々にベッドに向かった。

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました