地方や島の人口減少が進む昨今、地域活化につながる面白いアイデアを持ったビジネスがたびたび注目されている。
長崎県・壱岐島(いきのしま)は麦焼酎が有名な、大自然広がるTHE離島だ。
年々人口も減少するこの島には長崎からの飛行機、または佐賀・福岡からのフェリーでしか行くことができない。
そんな壱岐島で長崎県初の試み「クラフトビール作り」が行われていた。
今回は壱岐島でクラフトビールを作っているISLAND BREWERYを訪れて、なぜこの場所からビールを発信しているのかを考えてみる。
ISLAND BREWERYについて
壱岐島の勝本にお店構えるISLAND BREWERYは長崎県で初めてクラフトビールを製造・販売した、言わばパイオニアだ。
魚に合うビールを目指して開発されたISLAND BREWERYのクラフトビールは、麦焼酎作りに使用される白麹を加えて発酵という珍しいプロセスを経て製造されている。
そのため他のビールとは一味違う旨味や風味を感じることができる。
私の感想なのだがISLAND BREWERYのビールは特にビールの苦みを抑えてフルーティーさを感じることができる印象である。
店内にあるタップルームに行けばおいしいビールを素敵な料理とともに飲むことができる。
メニュー
私が訪れた際にはGOLDEN ALE、IPA、YUZU-KOJI ALEに加えて期間限定のYUBESHI CHOCOLATE、CELEBRATION、PORTERの6種類のビールがラインナップされていた。
ISLAND BREWERYを訪れた際におすすめなのが飲み比べセットである。
定番3種は定番ビールの3種類が飲めるのだが、プラス100円で期間限定ビールも含めた6種類のうちから3種類選ぶことができる。
お店の方が一緒にビールを選んでくれるためお気に入りの一杯が見つかるだろう。
アクセス・営業時間
長崎からISLAND BREWERYに行くためにはフェリーか飛行機が選べる。
私はお金を節約できる博多港発のフェリーでのルートを選択した。そのためにはまずは2時間かけて福岡に行く必要がある。
博多港からジェットフォイルで約1時間。
さらに港から島内のバスで約50分進んだ場所に長崎クラフトビールの発信源「ISLAND BREWERY」がある。
壱岐島内での移動は車がメインであるが、私のバックパッカー魂はお金を節約しながらのバス移動一択と叫んでいた。
ちなみにバスは本数こそ少ないものの(1時間に1,2本程度)一日乗り放題パスが1,000円で買えるためお金は浮く。バス車内などで言えば購入できるのでお金のない大学生はぜひ。
営業時間は、10:00 – 22:00 (L.O. 21:30)。
朝から夜まで楽しめる楽園だ。
ISLAND BREWERYに訪れる
2023年の2月にISLAND BREWERYにお邪魔した。
私は贅沢3種飲み比べセットにし、ゴールデンエール、ゆず麹エール、ゆべしチョコレートをオーダーした。
ゴールデンエールはマンゴーに似たフルーティーな味わい。麹を加えているからだろうか、さすがは苦みを抑えただけあってビールのうまみの部分を贅沢に楽しめる。
ゆず麹エールが個人的に一番好きだった。麹を加えて発酵させる際にクエン酸が発生し、独特の酸味が生まれるという。その酸味とゆずの香りが最高にマッチしており鼻から抜ける味わいが爽やかな印象だ。
季節限定のゆべしチョコレートは、黒ビールに壱岐で調味料として使われている「ゆべし」(柚子皮を醤油で煮たもの)を加えている。実際にチョコレートは入っていないが、醬油の香りが甘いチョコレートを思わせる。何も聞かずに飲んでいたらチョコレートが入っていることを疑わなかっただろう。
柚子やゆべしなど壱岐の特産を活かしたフルーティーなビールというのがやはりISLAND BREWERYの特徴だ。
なぜ島でクラフトビールを作り始めたのか?
今回、ISLAND BREWERYの代表である原田知征さんにお話を伺った。
Q.なぜ壱岐でクラフトビールを作ろうと思ったのですか?
原田:長崎でビールを作っている人がいなかったというのが一番の理由です。実家が麦焼酎メーカーで、壱岐に12社ある酒蔵のうちの一つでした。そのコミュニティにいるうちに自由に何かやりたいと思い出して、誰もやっていなかったクラフトビール作りを始めたんです。
長崎は出島もあり、様々な文化が日本で初めて伝わってきました。その中でビールだけ長崎発祥ではないというのが少し残念だったんです。
Q.ということは、ご自身がとてもビール好きなんですね!
原田:それが違うんですよ!皆さんに意外がられるんですけど、お酒の中でビールの独特の苦みが一番嫌いです。だから島の食材、特に魚に合う苦みを抑えた食中酒としてのビールを目指しました。
なるほど、ビールの中でも特にフルーティな味わいが楽しめるISLANB BREWERYは自身のビールに対する苦手意識からデザインされたビールなんですね。
Q.麦焼酎メーカーがいきなりビール作りに舵を切るのって大変ではなかったですか?
原田:もともと興味があって海外のクラフトビール工場などを何度も見学していたんですよ。そしたらそこの人たちはいい意味で適当にビール作りしていて、「こんな食材混ぜてみたけど、完成はどうなるかわからないぜ!」みたいに楽しく作っていたんです。その土地の食べ物を組み合わせて作るのが面白そうだなって思ってうちでもやり始めてみたらそれが案外うまく行っちゃって。
もともと麦焼酎メーカーとは言え、一からビールをサクッと作ってここまでおいしく仕上げるのって素人目にもよっぽどすごいことだってわかります。
ISLAND BREWERYは一番損しているビールかもしれない
Q.やはり麦焼酎に使う白麹を混ぜているところがISLAND BREWERYの最大の特徴ですか?
原田:そうですね、発酵の段階でクエン酸が発生するので独特の酸味が生まれるんですよ。でも日本の法律上、「ビール」として販売するためにはこの食材を使用してもいいですという決まりがあって、麹はその中に入っていないんですよ(参考リンク)。だから白麹をちょっとでも加えたらしっかりビールの製法でも「発泡酒」として販売しないといけないんです。
Q.ということは、酒税的にはちょっと安く販売できるんですか?
原田:それが酒税って麦芽の比率とアルコール度数で決まっていて、ISLAND BREWERYは使っている麹の割合が少しなのでビールといっしょの税金がかかるんですよ。麦芽の代わりにトウモロコシを多く使って作る第三のビールとかは安くなるんですけどね。その割に「発泡酒」っていう表記でお客さんからは安っぽいイメージを持たれてしまうから言っちゃえば一番損しているビールなんですよ(笑)。
たしかに!損しているビールっていう表現いいですね(笑)。
ISLAND BREWERYが飲める場所
現在、ISLAND BREWERYは「エレナ」全店をはじめとした長崎県の各お店だけではなく、東京や大阪など全国で瓶、さらにはタップで楽しむことができる。
さらには公式オンラインショップでも販売されている。壱岐の風を感じたくなったらぜひ。